クマに関する報道が過熱する昨今、実際に山へ足を運ぶ登山者の皆さんは、野生動物との共存についてどのように感じ、行動しているのでしょうか。株式会社ヤマップが実施した全国の登山者を対象とした「クマに関する登山者意識調査」から、興味深い実態が見えてきました。
登山者の9割が「お邪魔している」意識を持つ理由
調査の結果、なんと92.8%もの登山者が、山はクマの生息域であり、登山者は「お邪魔している意識を持つべき」だと回答しました。特に、北海道・東北地方の登山者や、登山歴が長く遭遇経験のある層ほど、この意識が強いことが明らかになっています。

この結果は、山と深く関わる人々が、野生生物に対する深い畏敬の念を抱き、現実的な共存を模索している姿を示しています。

実際に、登山者からはこのような声が寄せられています。
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「本来の山は自然界であり、そこに人間が登山道を付けてお邪魔させて貰っている感覚は常に忘れないようにしている。」(静岡・登山歴11〜20年)
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「常に動物のエリアにお邪魔させてもらっていると意識してます。」(福島・20年以上)
野生生物との遭遇は日常に。対策は「駆除」と「保全」の両輪で
登山中にクマを目撃した経験のある方は約3割(29.4%)にのぼります。さらに、サルやイノシシなどクマ以外の野生動物との遭遇経験者は93.2%にも達し、山で野生動物に「いて当然」と考える登山者がほとんどのようです。

クマ対策については、「人間の安全確保(駆除等)」と「共存のための環境保全(共存策)」の両方を支持する層が最多の43.1%を占めました。これは、人命の安全と自然環境の保護、その両面からアプローチする必要があるという現実的な認識が広まっていることを示唆しています。

登山者のリアルな声からは、共存への複雑な思いが伝わってきます。
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「山は野生動物の領域なので、人はその存在を尊重すべきだ。しかし現在は、クマの数が増えすぎて、人の生活圏に侵入している。人命を優先するなら、侵入するクマを駆除すべきだ。」(長野・11〜20年)
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「適切な個体数の維持に人間の介入も必要だとは思う。個人単位では出来ませんが、豊かな山(針葉樹ばかりではなく動物の餌となる木々が増える山づくり)を増やせたらと思う。」(新潟・1〜2年)
地域差と「会わない工夫」の広がり
クマの話題が登山頻度に与える影響は地域によって大きく異なります。全国平均では約6割が「変わらない」と回答しましたが、北海道・東北では「変わった」と回答した人が51.7%に上るなど、出没状況が登山行動に影響を与えていることが分かります。

具体的な対策としては、「撃退(スプレー等)」よりも「遭遇回避(会わない対策)」が重視されています。「熊鈴・ラジオの携行(54.7%)」や「事前の情報収集(47.3%)」、「単独登山の回避(38.3%)」など、接触そのものを未然に防ぐ工夫が主流となっているようです。

登山者の声からも、「会わない工夫」の重要性がうかがえます。
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「自分の存在を知らせて『如何にして野生動物との遭遇を事前回避するか?』というのが私なりの結論です。」(東京・20年以上)
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「出会う可能性がある野生動物についてある程度生態を理解すること。その上で遭遇時の対処法を常々シミュレーションしておくこと。畏敬の念を持って接すること。」(北海道・11〜20年)
詳細な調査結果は、以下のリンクから確認できます。
https://corporate.yamap.co.jp/news/rTiGq9ZB
クマと登山者の「境界線」を科学で解き明かす研究連携
ヤマップは、東京農工大学との研究連携を新たに開始しました。野生動物であるクマの生態や行動原理を深く理解し、科学の力でクマと人の「境界線」を引き直すことを目指しています。GPS解析を用いてツキノワグマの生活圏を可視化し、登山が彼らの生活にどのような影響を与えているのかを明らかにする、国内でも画期的なアプローチです。
年末特別企画!クマ研究者によるYouTubeライブ配信
2025年12月22日(月)20:00より、YAMAP公式YouTubeチャンネルにて、東京農業大学の山﨑晃司教授をお招きした年末特別ライブ配信が開催されます。

「クマに遭遇した方はどのように行動したか」「遭遇したとき、本当に有効な対処法・心構えとは?」など、報道だけでは見えてこないクマの生態を多角的に解説。2026年の登山シーズンをより豊かに、安全に楽しむために、今こそ知っておくべき知識を学ぶ絶好の機会です。当日はチャットでの質問にも答えてくれるとのことですので、ぜひリアルタイムで参加し、ご自身の「クマ観」をアップデートしてみてはいかがでしょうか。
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日時:2025年12月22日(月)20:00〜(予定)
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参加申込:不要
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出演:山﨑 晃司 氏(東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 教授 / 動物生態学・保全生態学)
Think Inプロジェクト:人と自然、知恵の共創へ
このライブ配信は、ヤマップが推進する「Think Inプロジェクト」の一環です。

「人間性の再発見」「境界の融和」「知恵の共創」を軸に、人と自然、頭と体の距離を「より親しく、より近く」へと導くことを目指しています。テクノロジーと共存しながら失われつつある「生きた手触り」を社会実装し、新たな豊かさを広く醸成していくこのプロジェクトは、これからの登山文化を考える上で大切な視点を提供してくれます。
まとめ:安全で豊かな登山のために、知識をアップデートする価値
今回の調査結果や研究連携、そして年末のYouTubeライブ配信は、登山者の皆さんがより安全に、そして自然を深く理解しながら登山を楽しむための貴重な情報源となるでしょう。クマとの共存は、私たち登山者にとって避けては通れないテーマです。
正しい知識と適切な心構えを身につけることは、安全な登山を継続するための大切な投資です。ぜひこの機会に、最新の情報を学び、より豊かなアウトドアライフを実現してください。
株式会社ヤマップの会社概要はこちらからご覧いただけます。
https://corporate.yamap.co.jp/

